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途上国の環境問題を、中小企業のコアビジネスで解決することへの挑戦(明和工業社長・北野滋氏、若手社員・徳成武勇氏インタビュー)

2016年11月15日

アフリカでの、近年目覚ましい経済発展や人口の増加。これに伴い増大する環境問題を中小企業のコアビジネスで解決する、そんな挑戦の最前線に立ちませんか? 明和工業株式会社では、東大や産総研との協働で磨いてきたバイオマス技術を活かし、ときには国のトップや国際機関を主体的に巻き込みながら、世界の先駆け事例を共に創っていく仲間を募集しています!

今回は、同社の北野滋社長と若手社員の徳成武勇さんにお話を伺いました。

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(企業概要)明和工業株式会社: 石川県金沢市を拠点とする研究開発型のニッチトップ企業。環境、農業、エネルギー等の分野を舞台に、中小企業ならではの柔軟な発想力とスピードを活かし、ものづくりを通じて地球規模の環境課題の解決に挑戦する。1965年設立。資本金65百万円。従業員数51名。2015年度の売上高は約13億円。同社WEBサイトはこちら
「ファーストワン」であること、トライ&エラーを大事にする企業文化

―明和工業とはどのような会社でしょうか。

北野滋さん(以下、北野): 生ごみや畜糞、農業残渣などの有機ごみを炭として再資源化する「バイオマス炭化装置」や、バイオマス発電プラント、農業用の集塵装置、排水処理施設などをはじめとした、地球環境の改善に資する機械装置の開発・製造を行っています。

大量に廃棄される残さを乾燥・炭化処理する大規模なバイオマス炭化プラント

みかん残さ炭化処理の例

もともとは鉄工所からのスタートでした。ただ、鉄工所というのはいわゆる下請で、大手メーカーさんの下でいろんなものを加工して作る仕事なんです。そうなると、ほとんど自分で価格を決めることができない。それは非常につらいことです。メーカーであれば、自分たちの工夫次第でより良いものをより安く提供することができますし、アイデアさえあれば自分たちですぐ作れるという利点が鉄工所にはありました。そこで1964年に鉄工所として創業しましたが、1970年にはメーカーとしての道を歩み始めました。北野社長―創業の翌年には、早くも公害防止設備の分野に進出していますね。

北野: 環境分野への取り組みはかなり早い時期から行っています。私自身、そうした取り組みをしているからこそ、明和工業に就職しました。実際、こうした取り組みは当時ニュースでも取り上げられました。いまでいうベンチャー企業的な扱いで注目を浴びたわけです。 最初に手掛けたのが大学と共同開発した排煙脱硫装置です。これは排ガス等から硫黄酸化物を除去する装置で、大気汚染や水質汚濁の防止に寄与するものですが、開発当初は非常にクレームの多い製品で、私も入社したころの仕事はクレーム処理ばかりでした。

排煙脱硫装置以外にも、私はいっぱい失敗を重ねてきました。作っては失敗、作っては失敗を繰り返し、多くの得難い経験をさせてもらいました。これは元々が鉄工所だったからこそ許されたことで、大変ありがたいことでした。そうした企業にいたからこそ、工夫する癖もこの中で身につきました。

全都道府県に納入実績がある「農業用集塵装置」。排煙脱硫装置で培った技術を応用して開発された。

―トライ&エラーは企業文化なのでしょうか。

北野: そうですね。いま、明和工業には農業施設とバイオマスという2つの事業領域があり、それらの関連技術や全くの新規技術を研究開発する部門があります。農業施設に関しては、はっきり言ってしまうとマニュアル化してしまっています。本当はもっと進歩があってもいいと思ってはいますが、ただ、今のところはもうひとつのバイオマス事業に注力しています。こちらは農業施設とは正反対で、非常に進歩のスピードが早い分野です。バイオマスの有効利用は環境問題の改善における一つのポイントとして注目が高まっており、今後もっと世界中で必要とされる技術にもなると思います。

バイオマス事業を進めるうえでの掛け声は「ファーストワン」です。誰よりも早く、一番にやる。とにかくスピードが大事なんです。「ファーストワン」であることを常に心がけていれば、それは必然的に「オンリーワン」になるということです。また、企業にとって社会への貢献も非常に大切です。環境のことを扱う以上は必ず社会への貢献がついて回りますから、そういった意味でも、バイオマス事業にしっかり取り組んでいきます。

説明文の代案:途上国でも使える、電気を使わない炭化装置。アフリカ各国の研修生が食い入るように見ている

世界で2番目に大きな淡水湖である、ビクトリア湖の環境課題にも挑戦。国家レベルのプロジェクトも自ら提案していける魅力

―「ファーストワン」の目指すところは、やはり誰よりも早く「オンリーワン」になることなのでしょうか。

北野: 環境の問題というのは、実は貧困であったり紛争であったりといった社会課題につながっていることが多いんです。例えばソマリア海賊の背景には廃棄物の問題があったりしました。私たちが取り組もうとしているのは、こうした社会問題の解決に環境技術で貢献しようということです。私たちにとっては、仕事を通じて環境問題を解決することこそが「使命」なんです。それがひいては貧困や紛争問題に解決をもたらすかもしれない。そう考えています。

使命という言葉からは悲壮感を感じるかもしれませんが、本当は楽しいことです。誰もやっていないことをやるからこそ楽しいんですね。 新しいことを自分で思いついて、やってみると上手くいくというのが技術的にわかると、やはり世の中に広めたいという気持ちが出てきます。それも使命感がなせる業と思いますが、いい技術であれば世の中に広がってほしい。環境の問題というのは非常に規模が大きなもので、私たちのような小さな企業の力だけではとても解決することはできません。だからこそ、私たちが「ファーストワン」となって技術を広めたいと思っています。

―技術を広めるための「ファーストワン」なのですね。

北野: そうです。環境問題を解決する技術はどんどん進歩していますが、横展開がなかなかされないことが問題だと思っています。私たちは、せっかく生まれた良い技術があるのだから、それを広めることこそが新しい使命と考えています。

たとえば、いま私たちが抱えているテーマに「窒素循環」があります。窒素肥料などが水に溶けだすことで、地下水などの富栄養化が進むという環境問題があります。化学肥料を使わない解決法が示せれば、この問題は解決の道を進むことができます。 そこで目をつけたのが排泄物や市場の野菜ごみなどのバイオマスです。どちらも、環境汚染や最終処分場の容量圧迫に繋がる、深刻なごみ問題になっています。肥料として再利用できれば、ごみも減らせるし、化学肥料を使わない農業も可能になる。

こういう話をアフリカ開発会議(TICAD)などですると、非常に関心をもって聞いてくださいます。FantasticとかAmazing、Excitingと言われるんです。Very goodでもExcellentでもない。こういう評価を受けるのは非常にうれしいことですし、ありがたいことです。北野社長最近、世界で2番目に大きな淡水湖であるビクトリア湖での環境問題の対策について、プロジェクト化に向けた具体的な協議が始まりました。ビクトリア湖では水草が湖面を覆い尽くしており、これも窒素循環の乱れが原因で発生しています。課題も複雑ですが、工夫することで解決策が見出せると信じています。私たちは小さい会社ですが、しっかり地に足の着いた提案を意識し、現地の人とビジョンを共有することで、国家単位の大きなプロジェクトを主体的に動かしていける面白さがあります。

ニッチな分野でのトップ企業数が日本で3番目に多い、石川県

―とてもチャレンジングだと思いますが、具体的に望む人材像もチャレンジ精神に富んだ人でしょうか。

北野: それが一番です。一番欲しい人材は、ここに来た彼、徳成さんみたいな方です。彼はとにかく外向き思考なんです。日本以外の国を知り、そこの問題が何かを把握し、それを解決したいという気持ちを持った人間です。それに対して自分は何をすべきか、はっきりわかっていれば自然と勉強するようになります。彼はそういう姿勢を持っており、私たちもそういう人に輪に加わってもらいたいと思っています。

徳成武勇さん(以下、徳成): 私がそもそも環境分野に関わるようになったのは、「働く」という意味での40~60年という自分の主役の期間をどうすれば充足させられるか考えたときに、環境保全というのは少なくともやって後悔しない分野だろうと思ったからでした。そこで、大学院まで行き、卒業と同時にアフリカのケニアで日本人が起業した環境コンサルティング会社に入社しました。現地の課題を解決できる技術を持った企業を顧客とし、現場知とネットワークを活かしてプロジェクトや調査実施のお手伝いをしていました。徳成さん明和工業との最初の出会いのきっかけは、そんなケニア時代でした。当時からビクトリア湖の水草問題などに興味があり、明和工業の持つ炭化技術とうまくリンクするんじゃないかと思って、協働に向けてアプローチをしたりしていました。 明和工業は金沢の企業ですが、私の地元も金沢なんです。石川県は実はニッチトップ企業数が日本で3番目に多い県なのですが、各社の取り組みを見ていると、CSRではなく「本業で」途上国の課題解決に繋がりうる企業が多いことに気づきまして。

私はそうした企業を通じて、1社じゃ保有できないような人材や知識などをコンソーシアム化して、地域でイニシアチブを取れたら面白いだろうと考えたんです。そのメンバーの1社として当初からお誘いしたいと考えていたのが明和工業で、そんな話を社長にお伝えしたら、「ぜひうちで」となって今に至ります。

北野: 私は一番大事なことは「素直さ」だと思います。純粋にこの問題を何とかしてあげたい、という気持ちがあると仕事に向かうエネルギーもまっすぐなものになります。彼は面接の際に、いろんな質問を積極的にしてくるので、非常に楽しかったです。うちは求人を出さなくても優秀な人が来てくれる会社です。その中でも「一味違うぞ」と思わせてくれる人間が、大きな変化を作る原動力になってくれると思います。

あくなきチャレンジによって変化を起こす側になる「よそ者」こそ来てほしい

―一緒に働く仲間はどんな方たちですか。

徳成: 国連や途上国の大使や大臣と直接やり取りして物事を前に進められるというのは、直接ソリューションを届けられる「プレーヤー」であるからこそできることです。中小企業では、熱意と能力を兼備した方であれば、下手なベンチャーよりもよっぽどやれることは大きいし面白いと思います。既に少なくない設備投資や研究開発投資が過去になされており、すぐ世に出せるレベルに成熟した技術が存在しているからです。中小企業は大企業よりも意思決定が早く柔軟な分、新しいことに積極的にチャレンジしたい個人にとっては非常に面白いと思います。

―「よそ者」にとっては何が魅力となるでしょうか。

北野:「強いものが残るのではなく、変化に対応したものが生き残る」という言葉がありますね。私たちは変化に対応するのではなく、変化を起こす側でありたいと思います。先ほど述べた窒素循環も変化を起こすひとつです。技術を広めることも、大きな流れを作ろうとする私たちのチャレンジです。これが一番の面白さです。当然、新しいことへのチャレンジはリスクを伴いますが、失敗をある程度しなければ本当にいいものはできないと思っています。「失敗は発明の母」という言葉は真実です。致命的な失敗は許されませんが、必要な失敗はする。そうしたチャレンジの繰り返しをして、新しい流れを作り出す。これこそが一番の魅力ではないでしょうか。

11月19日(土)@大阪、そして11月26日(土)@東京にて、北野社長と直接話しができるイベントが開催されます!エントリーを検討されている方には、個別面談の機会も。詳細は、以下のリンクから。

YOSOMON! MEET UP「未来を切り開くビジネスパーソンのためのローカルキャリアフェア」

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