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副業会社員が伝統工芸「木曽漆器」の会社へ参画。経営戦略のディスカッションパートナーとして。
久米井 秀之(YOSOMON!編集部)
山加荻村漆器店さんは、400年の歴史を誇る「木曽漆器」の産地、長野県塩尻市にある創業110年を超える老舗漆器店。近年のライフスタイルの変化や輸入品の増加に伴い、漆器産業が斜陽化する中、料理研究家とのコラボレーションによる商品開発、海外展示会への出展などチャレンジを続けています。
様々な取り組みを行う一方で、日々の業務が忙しく、なかなか中長期の展望を描けずいた同社の荻村社長が、YOSOMON!を通じて「経営戦略ディスカッションパートナー」を募集されました。今回は、マッチングに至った二宮さんとのキックオフミーティングの様子をお伝えします。
復興事業の経験を、伝統産業の復興へ
今回、経営戦略ディスカッションパートナーに選ばれた二宮さんは、岩手県釜石市の震災復興事業に取り組むリージョナルコーディネーター。復興事業を円滑に進めるために、自治体・企業・NPOなどのステークホルダー間の連携を促し、地域住民が一体となって復興まちづくりを進めていくための調整役を担うことで、復興事業の推進に貢献されています。前職では金融機関において多くの中小企業経営者と向き合ってこられた経験もお持ちです。
現在は、関係者全体を立ち回るコーディネーターの役割に大きなやりがいを感じている一方で、復興コーディネーターは有期ポジション。復興事業終了後を見据え、一つの事業者に深く入り込み、経営者に寄り添う経験を積む機会を模索されていました。
そんな中、SNSにて今回の募集を知り、「伝統を守りつつ、新しい領域にチャレンジしたい」という荻村さんの思いに共感されてエントリーされました。
個々のチャレンジがつながらず、長期的な戦略が描けない・・・
キックオフミーティングは山加荻村漆器店さんの概要の説明からスタートしました。取り扱う製品、伝統的な婚礼箪笥からモダンな食器、女子大とコラボしたアクセサリなどの紹介、製造工程の見学を行いました。
伝統的な漆器の需要の減少や職人さんの高齢化が進む中、現状を打破すべく「木曽漆器の世界に新風を吹き込みたい」という荻村さん想いが感じられる商品も多く、ディスプレーも洗練されています。長年のチャレンジが実り着実に新たなマーケットを開拓しつつあると感じられ、職人さんの高齢化問題も、若い世代が遠方から移住してくれるなど明るい兆しがみられます。
一方で、学生のインターンの受け入れ等、新しい取り組みを通じて海外展示会への出展などを行うもののインターン終了後の継続が難しく、個々の取り組みを結び付けて中長期的な経営戦略を作ることが難しい現状、さらに、財務状況の課題など、いかに足元を固めて荻村さんの想いを形にするかが重要であることが、荻村さんと二宮さんとの間で認識されました。
社長が「やりたいこと」を実現させるには?
ミーティング中、荻村さんが二宮さんに決めた理由を垣間見ることができました。それは二宮さんが「荻村社長が本当にやりたいこと」を支援をするという方針が明確だったことです。これまでの経験を活かし、財務分析など足元はしっかりと固めつつ、いかに商品に付加価値をつけて高額でも買ってくれるお客様にお届けするか、荻村さんの想いを実現するための方法を具体例をあげて語られていました。
YOSOMON! が起こす変化を追跡します!
キックオフミーティングに同席させていただき、荻村さんの「現状を打破したい」という思いを強く感じるとともに、二宮さんなら現状を的確に整理し、荻村さんの想いを形にする良き「経営戦略ディスカッションパートナー」になると感じることができました。
次回はお二人だけで山加荻村漆器の財務分析など突っ込んだ議論を行うとのこと。YOSOMON! を通じた今回の取り組みが山加荻村漆器店さんにどのような変化を起こすのか、引き続き動向をお伝えします。

PROFILE
久米井 秀之(YOSOMON!編集部)
1976年神戸市生まれ。静岡県在住。2003年より大手自動車会社にて燃料電池自動車の開発に従事している。会社の休暇を利用してETIC.にてプロボノ活動に初挑戦。本稿の執筆を担当した。
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